【オールカマー回顧】勝利をたぐり寄せた田辺裕信騎手の戦略 メイショウゲキリンに眠る名牝系の血を呼び起こす
SPAIA競馬
トップ>ニュース>【オールカマー回顧】勝利をたぐり寄せた田辺裕信騎手の戦略 メイショウゲキリンに眠る名牝系の血を呼び起こす

【オールカマー回顧】勝利をたぐり寄せた田辺裕信騎手の戦略 メイショウゲキリンに眠る名牝系の血を呼び起こす

2026/09/22 10:30
勝木淳
2026年オールカマー、レース結果,ⒸSPAIA

ⒸSPAIA

道悪でも内が優位な中山の芝

秋の中山伝統のGⅡオールカマーはメイショウゲキリンが逃げ切り、重賞初制覇。2着キャントウェイト、3着ヴーレヴーで決着した。

中山は3日間競馬の最終日である月曜日の開催が中止になり、火曜日に延期された。台風25号の接近予報を受けての予防的措置だった。競馬は自然には勝てない。秋の中山はその自然に左右される開催が続く。平日、開催当日の雨が続いてしまい、芝の良馬場は初日の9月5日と19日の計2日だけしかない。

だが道悪競馬が続き、芝の傷みは急速に進んでいるものの、外差しには一向になっていない。それどころか内を回っていないと話にならない競馬が続き、今週はCコースに替わってさらに顕著になった。天候さえ崩れていなければ、この秋の中山はかなりいい馬場状態でレースが行われていたにちがいない。

時計はかかるが、外を回ったらアウト。なんとも難しい馬場状態でレースは進み、オールカマーもそんなトラックバイアスの影響を大きく受けた。この先の秋競馬を占う一戦だけに、GⅠでの評価のポイントになるだろう。

速いラップが刻まれにくい、内優位の先行優勢の馬場。この設定を完璧なほど味方につけたのがメイショウゲキリンの鞍上を務めた田辺裕信騎手だった。中山や福島の仕掛け名人であり、馬場を読みきる戦略家である。

メイショウゲキリンは今年の2月に4勝目をあげたものの、その後は障害に転向。未勝利を2戦して8、6着としたのち、オールカマーに駒を進めた。4勝目の八坂Sは京都芝2200mで好位から3コーナーで先頭に立って押し切った。決着時計は2:13.5。過去の戦歴からもできれば時計はかかってほしいタイプだった。

さて、このメイショウゲキリンがこの馬場のなか、オールカマーで好走するにはどんな手があるのか。田辺騎手の練った戦略が逃げだった。

それもできるだけゆったり入り、仕掛けをギリギリまで遅らせて振り切る作戦。変に飛ばしたり、後続に早めに来られ、ロングスパート勝負になると、体力の差がでてしまう。メイショウゲキリンと田辺騎手はこれしかないというたった一本の道をまっすぐ通り抜け、先頭でゴール板を通過した。


大仕事をやってのけたケイティーズ牝系の血

まさに芸術のような競馬だった。外回りに入る前に13.0とペースを落とし、1000m通過は1:02.4。向正面に入ってから12.3-12.5-12.5-12.4と進み、3コーナーからゴールまでは12.5-12.3-12.1-12.7。メイショウゲキリンはあくまで自分のペースでギアを入れ替え、ゴールまで踏ん張り通した。

血統表に目を向けると、3代母にケイティーズファーストの名がある。メイショウゲキリンの祖母クィーンズダガーの妹はマイケイティーズ。先日、死亡したアドマイヤムーンの母だ。

一族にはほかにもエフフォーリア、スリープレスナイト、古くはヒシアマゾンもいる。日本競馬に枝葉を広げた牝系にディープインパクト系キズナの血とくれば、GⅡ勝利は不思議でもなんでもない。鞍上と馬場が最後のピースを埋めてくれた。


こちらも戦略が冴えたキャントウェイト

2着キャントウェイトは札幌のWASJ第2戦の抽選で横山典弘騎手と出会い、一気に道が開けた印象だ。今回は最内枠が当たり、横山典弘騎手もまた田辺騎手と同様に腹を決めて、戦略を練った。

徹底したイン狙い。終始内ラチ沿いを離れず、距離ロスを消し、体力を温存した。直線だけ1頭分、外に持ち出し、追撃態勢をつくるも、ハナ差だけ及ばなかった。

時計のかかる馬場がベストで、これ以上ない競馬。ハナ差負けたのは痛すぎるが、得意な形ははっきり見えた。引き続き横山典弘騎手が力を引き出してくれれば、チャンスは回ってくる。

3着ヴーレヴーは重馬場の巴賞を制した道悪巧者で、ファンもこの馬場でもっとも高く評価した一頭だった。3番手追走の理想の形がとれたものの、最後はやや伸び負けてしまった。距離が響いたともとれる。

4着レガレイラはゲートを決め、馬場を考慮した好位追走と競馬の形は上々だった。直線で伸びを欠いたのは馬場の影響であり、まだまだ精神面でも戦えることを示したのは大きい。この馬場で走った影響は気になるところだが、秋のGⅠ戦線でも楽しめる一頭であることは揺るがない。

2番人気コスモキュランダは11着。スタートで遅れ、馬場も合わないという最悪の形になってしまった。参考外と考えていいが、スタートの遅れが次走に影響しないかどうか。そこは心配だ。


2026年オールカマー、レース回顧,ⒸSPAIA


《ライタープロフィール》
勝木 淳
競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースオーサーを務める。『名馬コレクション 芦毛の怪物たち』(ガイドワークス)に寄稿。

《関連記事》
・【オールカマー】結果/払戻
・【オールカマー予想印まとめ】レガレイラに本命入らず 本命最多は充実一途ヴーレヴー
・【オールカマー】AIの本命はヴーレヴー 「4歳牝馬×4枠以内」に連対率100%データ