【シリウスS回顧】距離延長で復活したヴァルツァーシャル 40年近く受け継がれる梅田牧場ゆかりの血

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スローペースのダート重賞
GⅠに向けて賞金加算を目論む馬たちが集うダート重賞・シリウスステークスはヴァルツァーシャルが制し、重賞2勝目。2着ルシュヴァルドール、3着マイノワールで決着した。
JRAで唯一のダート2000m重賞は、距離適性の見極めがカギ。そこにハンデという要素も加わるため、例年難解な一戦になり、その結果も人気通りにはなかなか収まらない。今年も5番人気、13番人気、7番人気で決着し、3連単は70万円近い配当になった。
人気を背負ったラムジェット、ギュルヴィは果敢に先行して7着、5着。ギュルヴィは見せ場をつくれたが、ラムジェットは7着とらしさがなかった。休み明けの影響もあっただろうか。
人気の先行2頭が凡走したわけだが、ペースは決して速くなかった。序盤600m36.1、中盤で13.6-13.1とさらに緩み、1000m通過は1.02.8。重賞としては遅いぐらい。
ペースが上がったのは残り600mからで、12.1-12.3-12.7の37.1。ダートとしては珍しく上がりの競馬になった。展開利は先行勢にあり、2着ルシュヴァルドールが勝っていてもおかしくなかった。
距離延長を味方に
一方で、上がりの競馬になったことで、末脚自慢も力を発揮しやすかった。特に距離適性が少し短めのタイプにとって、緩い流れは追走で体力を奪われずに済み、脚を溜めやすかった。
その象徴が、勝ったヴァルツァーシャルだ。2年前のマーチS勝ちなど中山ダート1800m専用のイメージで、2000mは守備範囲とはいえない。今年のマーチSは58.5kgを背負って4着に敗れており、実力に陰りが見えたと評価する向きもあったが、次走の平安Sは2着。距離延長を克服していた点を見逃してはいけなかった。
年齢を重ねて適性距離が延びるのはよくあることで、ヴァルツァーシャルはその典型といっていい。距離短縮のエルムSで5着に敗れ、そこから再度の距離延長となる今回は好走パターンではあった。
レースでは中団馬群に入ってしっかり脚を溜め、勝負所では大外を目指さず、距離ロスを抑えた。最後も馬群を割ってくる手順によって、できるだけ最短で、末脚をストレートに着順につなげることで、勝利を手繰り寄せた。
血統面を見ると、非常に歴史を感じる牝系で、母バイカターキン、祖母アブラシオ、その母ジュウジホウセキと、すべて梅田牧場の生産馬だ。
ジュウジホウセキの母ジュウジターキンは1980年に社台ファームで生まれ、梅田牧場で繁殖入り。そこからこの牝系がつながっていった。梅田牧場にとっては40年近い歳月を経て、ヴァルツァーシャルにたどり着いたことになる。
馬産地のなかでもとりわけ東にある浦河には、こういった血が今も残されている。牝系はつないでいくもの。重賞2勝目をあげたヴァルツァーシャルは、それを証明してくれた。
ブリンカーで一変したルシュヴァルドール
2着ルシュヴァルドールはここ2戦2桁着順が続き、陣営からその影響を心配する声も聞こえていたが、それをブリンカー装着で見事に立て直した。
行きっぷりが復活し、4走前・プロキオンS3着時のような積極的な競馬で粘る姿勢を見せた。ラストで少し脚が鈍ったところを捕まってしまったが、これは距離適性もある。1800mなら重賞制覇も見えてきたのではないか。
3着マイノワールは勝負どころではヴァルツァーシャルと同じ位置にいたが、1頭外にいたことが明暗をわけた。4コーナーでの攻防では勝ち馬の進路を狙いにいったが、相手の手応えがよく、やむを得ず外に回った印象だ。
着差の0.1秒はその分の差であり、力量的には見劣らない。ハンデ55kgと斤量利があったことを考えると、前の2頭との差はあったかもしれないが、オープン昇級初戦だったことも踏まえ、重賞通用のメドを立てたといっていい。

《ライタープロフィール》
勝木 淳
競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースオーサーを務める。『名馬コレクション 芦毛の怪物たち』(ガイドワークス)に寄稿。
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