【新潟2歳S回顧】勝敗を分けた田辺裕信騎手の“仕掛け” レッチュベルクが瞬発力勝負を制す
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【新潟2歳S回顧】勝敗を分けた田辺裕信騎手の“仕掛け” レッチュベルクが瞬発力勝負を制す

2026/08/24 11:07
勝木淳
2026年新潟2歳S、レース結果,ⒸSPAIA

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例年通りのスローペース

夏の新潟2歳王者決定戦の新潟2歳ステークスはレッチュベルクが制し、重賞初制覇。2着トウシンマジック、3着トップチェッカーで決着した。

先週は札幌でワールドオールスタージョッキーズが開催され、日曜はGⅠ馬が参戦するキーンランドカップと話題の多くは北の大地に集中していた。

一方で新潟2歳Sは10頭立てで1勝馬5頭、未勝利馬4頭、初出走1頭という組み合わせになり、ちょっと寂しい組み合わせになった。おそらく翌週に芝1400mの中京2歳ステークスが組まれ、メンバーが分散するようになったのも原因だろう。

芝1200mの小倉2歳ステークスなら重ならないが、1400mだとそうはいかない。まだまだ適性を見定めている途中の2歳馬のため、この先も新潟2歳Sは微妙な立場になりそうだ。

そういった前提で考えると、いささか評価が難しくなるところだが、前後半800m48.6-46.1は以前の新潟2歳Sと変わらない。このレースはほぼスローペースになる。やはり2歳夏に新潟外回りで飛ばすわけにはいかない。

注目は後半600m11.2-10.7-11.1、33.0。前半でエネルギーを消費せず、瞬発力勝負の後半で爆発させるレース巧者ぶりが試された。静から動へ。人間が思い描くのは簡単だが、2歳馬がそれを実行するのは難しい。これをクリアしたのが勝ったレッチュベルクだった。

冴えわたる田辺裕信騎手のヘッドワーク

荻野極騎手の離脱により手綱が回ってきた田辺裕信騎手は追い切りで感触をつかみ、その特性をレースの流れに応じて見事に引き出した。その流儀が集約したのが直線での攻防だろう。

内のレッチュベルクに外からトウシンマジックが並びかけてきた。当然、ここは勝負どころ。トウシンマジックに対抗して仕掛けていくのが自然だ。しかし、田辺騎手はそこで待った。遅い流れ、溜まった末脚からトウシンマジックの仕掛けを早いと判断した。

当然、仕掛けたトウシンマジックは前に出ようとする。残り200m標識付近では同馬が勝つような雰囲気だった。だが、それはレッチュベルクが仕掛けを遅らせたゆえのこと。ワンテンポ遅れて追い出すと、しぶとく差し返した。

スローの瞬発力勝負の場合、脚の使いどころが難しい。理想はゴール板をもっとも勢いづいた状態で駆け抜けること。レッチュベルクはまさにそんな理想の走りを見せた。

残り400~200m10.7で脚を使ったトウシンマジックとその次の11.1で瞬発力を使ったレッチュベルク。勝負はタイミングひとつで変わる。これもスローペースの特徴のひとつ。新潟を知り尽くす田辺騎手のヘッドワークが光った。勝負を待てる感覚は、田辺騎手最大の武器といっていい。

レッチュベルクの父はインディチャンプ。スローのマイル戦で好位から瞬発力を使う形が勝ちパターンであり、父の特徴そのもののレース振りだった。

インディチャンプはその父ステイゴールド系としては距離適性など異色の存在だが、勝負根性は父譲り。レッチュベルクの見事な差し返しにはステイゴールド系の勝負根性が垣間見える。崩れそうにないタイプでもあり、今後も2歳戦線では外せない存在だ。

適性の差もあったトウシンマジック

2着トウシンマジックは仕掛けひとつの差。といっても、あの状況でレッチュベルクに呼応して仕掛けを待つのは難しい。なにせこちらは並びかける側。待てば振り切られる可能性は高かった。

ベストは早めに並んで併せ馬に持ち込む形であり、先に仕掛けるのは仕方ないところ。同舞台の前走では上がり600m32.8で初陣を飾っており、手応えはあった。強気に出るのも納得だ。こちらは父モズアスコットであり、おそらく持続力勝負で良さが出る。レッチュベルクと比べると、適性の差もあった。

3着トップチェッカーは勝ち馬と同じインディチャンプ産駒。瞬発力勝負は悪くなかったが、勝負に出るには前半の位置が一列後ろだったのは痛かった。速い上がりの経験が不足しており、このレースを経てまた変わってくるだろう。

9着インカルナータはパトロールビデオを見ればわかるが、4コーナーで手前を替えた瞬間にリズムを乱し、外へ逸走。前半から行きたがるなど随所に若さを見せていた。調教再審査が課されたが、まずは課題クリアが先決。経験を積めば、今回のようなことはないだろう。


2026年新潟2歳S、レース回顧,ⒸSPAIA


ライタープロフィール
勝木 淳
競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースオーサーを務める。『名馬コレクション 芦毛の怪物たち』(ガイドワークス)に寄稿。

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